いつもの時間に仕事から帰って、いつものようにポストを覗く。ポストの中がチラシでいっぱいなのも、いつも通り。なのに、チラシに紛れて小さな手紙が入っているのは、いつもと違った。封筒の中には、スライスしたドライ梨が数枚。まるで便箋みたいだ。指先で触れるドライ梨の便箋は、乾いているのに、みずみずしさを感じるソフトな質感。お腹がペコペコだと鼻も利くのか、ほんのり甘酸っぱい香りがした。すぐにパクッといきたかったけど、夕食前だからもう少しの我慢。いつものように、ぼんやりTVを見ながら一人で食事を済ませて、いつものように、食後のお茶を淹れてから食べてみることにした。選んだお茶はダージリン。自然な甘さのドライフルーツには、シンプルな紅茶が合う。まずは一枚。ん、甘い。あ、甘い甘い。ん~、とっても甘い。噛めば噛むほど、甘い。甘さの中から、時折ふわっと香る爽やかなアロマは、きっと酸味の名残なんだろうな。ドライ梨なんて初めて。だから、この甘さと香りは、生まれ変わった梨を食べるみたいで新しい。だけど、しっとりとした食感や、一枚一枚の食べ応えは、昔よく食べた梨と似ていて懐かしい。いつもの紅茶も、休日に淹れるフルーツティーのように味わえて、何だかちょっと嬉しくなった。お茶の温もりとドライ梨の甘さに、ふ~っと落ち着いたら、ふと、あの子の顔が浮かんだ。もしかしたら、この手紙をくれたのは、あの子なのかもしれない。それだと、あの子らしくてしっくりくる。今も昔と変わらず私のこと、よく分かってくれてるんだな。仕事から帰って、TVの前で夕食を食べて、お気に入りのお茶で寛いで。いつもと同じように過ごしているのに、今夜はあの子の優しさを感じて、一人じゃないみたい。あの子は元気かな。今度の休みは久しぶりに、連絡をとってみようかな。