私の元に友人から思いがけない手紙が届いた。「分厚い……」驚いて開けてみると、そこには彼女の撮った写真が何枚か貼付された「ドライ梨」を使ったレシピ集が入っていた。1ヵ月ほど前のことだ。私が次回の記事ネタにすると話した「ドライ梨」のことを気に留めてくれていた料理上手な友人が、自身の考案したレシピを送ってくれたのだ。「ドライ梨のレシピ、あんなにたくさん……ごめんね、ありがとね」気の置けない友人とはいえ私はただただ恐縮していた。「そんなのいいのよ。私こそ、あんたにドライ梨の存在を教えてもらって感謝しているのよ」「本当にありがとう。早速、原稿に使わせてもらうね」私は彼女の素晴らしい数々のレシピを4話のシリーズ記事にすることにした。ドライ梨は文字通り梨を乾燥させたドライフルーツだ。甘くて柔らかい食感の赤梨ではなく、酸味のあるサクサクとした食感の青梨を使ったもので、食べた瞬間に口に広がる優しい甘みがどこか懐かしさを呼び起こす。私は友人からもらったレシピを見て驚いた。どれも彼女の人柄が滲み出たものばかりだったからだ。《ドライ梨とレモンのゼリー》名前から夏の暑い日に海から吹く優しい風を、ふと思い出した。彼女と学校の帰りによく海際を散歩した日のことを思い出した。ドライ梨とレモン汁とビトーシュガーとゼラチンと水、5つの材料で出来上がる、手軽なおやつだ。レモンゼリーのレシピはこちら《ドライ梨とレモンカードのタルト》彼女も私も梨が好きだが、同時にレモンも大好きだ。レモンカードとはイギリス発祥の伝統的なスプレッドタイプのデザートだ。彼女は優しい甘さのドライ梨とレモンカードの相性が抜群だとコメントを添えてくれていた。タルトのレシピはこちら《ドライ梨のココナッツミルクプリン》意外な組み合わせに思わずハッとした。南国のフルーツというイメージがあったココナッツと和梨が意外にも相性抜群なのだそうだ。友人のアイデアの引き出しに驚くばかりだ。ココナッツミルクプリンのレシピ《ドライ梨のアーモンドタルト》私は友人の焼いたアーモンドタルトの写真に目が奪われた。スイーツの写真としては少々華やかさに欠けるかも知れないその写真に目が留まったのは、その素朴さに安心感を覚えたからかも知れない。ドライ梨をタルトの上に敷き詰め焼いた後、ココナッツファインを散らせば完成だそうだ。どこか優しい、しかし芯のある美味しさを貫く、そんな友人のタルトを私は食べたくなってしまった。アーモンドレシピはこちら《ドライ梨とバナナのパウンドケーキ》彼女の作るスイーツと言えば、パウンドケーキが定番になっている。いつも私が自宅を訪ねると必ずといっていいほどパウンドケーキを焼いてくれているからだ。彼女のレシピには「控えめな味のドライ梨はどんな食材とも相性がいいが、バナナとも良い関係性を築けるのよ」と書き添えられていた。パウンドケーキのレシピ「なるほどねぇ……こりゃ良い記事が書けるぞ!」私は俄然やる気がみなぎってくるのだった。第二十一話:ドライ梨で作る乙女のスイーツ