「追熟できるんだ……へぇ……」私はラ・フランスとスマホを交互に見ながらキッチンで仁王立ちをしていた。その日クライアントへの取材を終えた私は、職場に戻ることなくそのまま帰宅することになっていた。思った以上に取材が押してしまったことで昼食を摂り損ねていた私は迷った末、外食はやめて食材を買って自炊することにした。スーパーの生鮮コーナーをうろうろしていた時、果物が並ぶ通路で思わず足が留まった。見慣れないそのフォルムに気付けば手が伸びていた。ラ・フランスを買って帰って来たのはまったくの予定外だったが、スマホで色々調べているうちに梨好きの私の心に火がついてしまった。買ってきたラ・フランスの写真付きメッセージを友人ふたりに送ると、ほどなくして友人たちから返信が来た。「珍しいの買ったわね」「しっかり追熟しなさいよ」友人の助言を読み、私はラ・フランスがこれまで自分が食べてきた果物とは少し性質の異なる果物であることを知ったのだった。西洋梨の一種であるラ・フランスは、19世紀半ばにフランスで誕生した。その美味しさに感動したフランス国民が「我が国を代表するに相応しい果物である」と賞賛し「ラ・フランス」と名付けられたといわれている。その後ラ・フランスは、山形県に樹齢100年ほどになるラ・フランスの木があることを根拠として、明治36年に日本に渡来し時間をかけて発展してきたと考えられている。そうして山形県は西洋梨王国と称されるほど次々と品種改良を重ね、日本国内における西洋梨の発展に傾注してきた。山形県は昼夜の寒暖差が大きく、台風被害を受けにくい盆地気候が味方し、糖度の高い大きな果実を持つラ・フランスが生産できるのである。そんなラ・フランスの最大の特徴とも言えるのが「追熟」だ。追熟とは果物収穫後、一定期間貯蔵することにより完熟させることをいう。そもそも収穫直後のラ・フランスは果実が硬いため2週間から3週間ほど時間をかけて追熟させるのが通例である。追熟の方法は新聞紙やキッチンペーパーでラ・フランス全体を覆いポリ袋等に入れて直射日光の当たらない室内で保管するやり方が一般的だ。室温は15度から20度前後を保つようにすると最適だ。追熟を早めたい場合もやり方もある。室温が高い部屋で保管、さらに熟した林檎といっしょにポリ袋に入れておくと追熟が早まり効果的だ。一方、冷蔵庫で保管すると追熟を遅くする作用がある。そして追熟が完了しているかの見分けは、ラ・フランスの軸の周囲の盛りあがっている部分を指で押してみて、柔らかくなっていたら食べ頃だ。このように食べ頃を迎えるにあたり時間をしっかりかけ、まるで育てる感覚を味わえるのがラ・フランスの魅力だ。そのままカットして食べるもよし、コンポートにしてヨーグルトなどに添えるも良し。甘くしっとりとした食感が食べる人を幸せな気持ちにしてくれる。ラ・フランスの特徴と魅力まとめラ・フランスは19世紀半ばにフランスで誕生した西洋梨の代表品種です。名前の由来は、その美味しさを称賛したフランス国民が「フランスを代表する果物」と呼んだことからとされています。日本には明治36年(1903年)頃に導入され、現在では山形県を中心に国内栽培が盛んに行われています。果実の特徴形:洋梨らしい下膨れのフォルム。大きさ:1玉約250〜350g。食味:糖度は約13度前後。濃厚な甘みと芳醇な香りが特徴。食感:ねっとりとした舌触りが和梨との大きな違い。旬と収穫時期収穫:9月下旬〜10月上旬に収穫。食べ頃:収穫直後は硬いため、2〜3週間の追熟が必要。旬のピーク:11月〜12月。クリスマスや年末年始の果物として人気が高いのもこの時期だからです。主な産地山形県:国内シェア約70%を占める最大産地。盆地特有の寒暖差が甘く大きな果実を育てます。青森県・長野県・新潟県:寒冷地を中心に栽培。山形県は「西洋梨王国」とも呼ばれ、ラ・フランスのブランド力を国内外に広めています。追熟の重要性ラ・フランスは「追熟」が必須の果物です。収穫直後は硬く食味に優れませんが、2〜3週間の追熟で柔らかく甘みと香りが最大限に引き出されます。追熟方法:新聞紙やキッチンペーパーに包み、ポリ袋に入れて常温保存。早めたい場合:リンゴと一緒に保管する。遅らせたい場合:冷蔵庫で保存。食べ頃の見分け方は「軸の周囲を指で押してやや柔らかければOK」です。食べ方のバリエーション生食:追熟後にカットしてそのまま。芳醇な香りとねっとり感を堪能。スイーツ:タルトやケーキの具材に。加工:コンポートやジャム、赤ワイン煮も定番。洋梨らしい濃厚な甘みと香りを活かし、幅広い料理に応用できます。まとめラ・フランスは「果物の女王」とも称される西洋梨の代表格で、日本では山形県を中心に栽培されています。最大の魅力は「追熟」による食感と甘みの変化で、食べ頃を見極めることで最高の美味しさを楽しめます。和梨にはない濃厚で芳醇な味わいは、多くの梨好きにとって特別な存在です。第十三話:梨の保存方法について